あなたは、クラシック音楽のコンサートに行ったことはありますか?
興味はあるけどなんとなく行きにくい、行ってみたいけどなんだか難しそう・・・・・・。
そんなイメージがあるかもしれませんが、実は意外と気軽に楽しめるものです。
ちょっとした知識やマナーも必要ですが、生演奏の魅力は何にも代えがたいもの。
今回は、もっと気軽にクラシックコンサートを楽しむためのヒントやコツをご紹介します。
ぜひ、思い切ってコンサートに出かけて、世界を広げてみましょう。
クラシックコンサートにはどんなものがある?
クラシックコンサートは、クラシック音楽を間近で楽しめる演奏会です。
特徴は、マイクなどを通さずに「生の音」に触れられること。
迫力のある演奏や歌声を生で聴けることが魅力です。
クラシックコンサートには、大きく分けて3つあります。
- リサイタル
リサイタルとは、独奏会や独唱会という意味。
ヴァイオリンやピアノ、歌手などがソロ(1人)で演奏します(伴奏付きの場合もあります)。
また、規模が小さいことも特徴のひとつです。
演奏者との距離が近いので、その息づかいを間近に感じられるという魅力もあります。
チケットも比較的安く手に入りやすいため、手軽にクオリティの高い演奏を楽しみたい方におすすめです。
ちなみに、有名アニメテレビ番組では、友人知人を強制的に集めてひどい歌を聴かせる、「ジャイアンリサイタル」が出てきますね。
実際にはそんなリサイタルはありません(たぶん)、ご安心ください! - オーケストラ
シンフォニー・コンサートともいわれ、オーケストラ単独で行われるコンサートです。
オペラなどの伴奏としてではなく、独立したオーケストラの演奏会というのが特徴のひとつ。
「定期演奏会」といった名目で行われる演奏会も多く目にします。
オーケストラのコンサートは、コンサート初心者にもおすすめです。
演奏される楽器が多く、その音色も多彩で迫力があるので、目が離せません。
演奏時間も2時間(途中休憩あり)と、適度な長さです。
いくつかの楽章からなる交響曲や、ピアノやヴァイオリンなどのソリストを迎えて演奏する協奏曲など、スケールの大きい華やかな演奏を楽しむことができますよ。 - オペラ
オペラは、合唱やオーケストラ、演劇、文学、美術などが融合した「総合芸術」です。
たとえば、「フィガロの結婚」「カルメン」などのタイトルがついた作品があります。
クラシックコンサートの中で、最も規模が大きいコンサートといえるでしょう。
上演時間は3~6時間と長いので、たっぷりと味わえます。
スタッフや出演メンバーは多岐にわたり、演奏面では指揮者が全体を率いて進めていきます。
多くの人が協力して作り上げる、迫力のある舞台は見ごたえ十分です。
この他にもファミリーコンサート(親子向け)やガラ・コンサート(コンクール入賞者などトップレベルの演奏を聴ける)、野外コンサート、アニメや映画の音楽をオーケストラで聴くコンサート、などがあります。
公民館などの公共施設や、ホールにもチラシが置いてあるので、興味のあるコンサートをチェックしてみましょう。
クラシックコンサートのすすめ
クラシック音楽を聴く方法として、昔はレコードやカセットテープなどで楽しんでいたものです。
それはそれで味わいがあり、今でも愛好家が多いと聞きます。
現代ではCDや音楽配信サービス、インターネット上でずいぶん気軽に聴けるようになりましたね。
さらに楽しむ方法として、生の音楽に触れられるコンサートはいかがでしょうか。
大きなホールで行われるコンサートは緊張するし、行きにくい・・・・・・。
子どもを連れて行きたいけど、迷惑になるかも・・・・・・。
そんな場合は、まず公民館などで気軽に聴けるミニコンサートや、ファミリーコンサートに行ってみましょう。
クラシック音楽にまつわる楽しいトークがあったり、赤ちゃんからお年寄りまで楽しめるような内容になっていますよ。
また、大きなホールで行われるコンサートの中でも、安価で気軽に聴けるアマチュアオーケストラなどのコンサートもおすすめです。
演奏される曲や楽器などについて、楽しい解説が付く場合もあります。
また、小さいお子さんも一緒に聴けるコンサート(ホールに特別室がある場合も)や、託児サービスがあるコンサートもありますので、チェックしてみましょう。
個人的におすすめなのは、新年に催されるニューイヤーコンサート。
ワルツやポルカといった、軽くてノリのよい曲ばかりで、気楽に聴ける内容になっています。
中には、曲の解説をしてくれるコンサートも。
家族や友人と行っても、一人で行っても、どちらでも楽しめますよ。
クラシックコンサートの魅力とは?
- 生演奏の迫力を楽しめる
まずはなんといっても、生演奏の臨場感が楽しめることでしょう。
これはCDやインターネットでは味わえない魅力のひとつです。
生演奏の迫力に圧倒されて、クラシック音楽の楽しさにハマる人も多いとか。
そして、コンサートは、演奏者によって音が生み出される瞬間に立ち会うことができる貴重な機会です。
その瞬間は一期一会であり、その場に居合わせた人たちと音楽の感動を共有する楽しみもあります。
ちなみに、静寂も音楽の一部です。
指揮者が指揮棒をふりあげた瞬間や、曲が終わって指揮棒をおろしたあとの一瞬の静寂も、クラシックコンサートならではの魅力かもしれません。
また、コンサートホールは音を楽しむためにさまざまな工夫がされています。
コンサートホールに足を運んだ際には、そのホールならではの響きや静けさを楽しんでみてはいかがでしょうか。 - 演奏者と同じ空間を共有できる
演奏者は、音だけでなく表情や体の動きで音楽を表現しています。
わかりやすいのは、指揮者です。
体全体を使って演奏者に合図を送ったり、指示を出している様子を感じてみましょう。
コンサートでは、演奏者の表現の仕方に注目すると、演奏者と同じ空間を共有している感じが高まります。
また、ピアノやヴァイオリン、声楽などのリサイタルでは、より近くで演奏者の雰囲気や息吹のようなものを感じられるかもしれません。
同じ曲でも指揮者や演奏者によって表情のつけ方や動き方などが違うので、それぞれの違いに注目して楽しむのもよいでしょう。
- コンサートホールで非日常を楽しめる
コンサートが行われるホールには、音を楽しむためのさまざまな工夫がされています。
普段過ごしている空間とは一味違う気分を味わうことができますよ。
ホールに一歩足を踏み入れただけで非日常を楽しめることも、魅力のひとつです。
また、それぞれのホールには個性があるので、その違いや雰囲気を感じてみるのも楽しいかもしれませんね。
外観や内装のデザイン、ロビーの雰囲気や客席のつくりなどを観察してみましょう。
たとえば、日本を代表するホールのひとつであるサントリーホール(東京都赤坂)。
サントリーホールは、「世界一美しい響き」をコンセプトに設計され、1986年に誕生しました。
ホール自体が楽器のように共鳴するつくりになっていることが特徴です。
大ホールは、日本で初めて取り入れられたヴィンヤード(ぶどう畑)形式。
全2006席がまるでぶどうの段々畑のようになっていて、ステージからの音楽の響きが太陽のように降り注ぐのです。
その眺めや音の響きは圧巻で、演奏者と聴衆が一体となることができます。
客席の椅子や壁には、ウイスキーで使われる「オーク材」を使用。
高級感あふれる内装や豊かな音の響きを楽しめます。
また、ステージには大きなパイプオルガンがあり、使われているパイプの数はなんと5898本と、世界トップレベル。
ほかにも、あちこちに音の響きを最大限に楽しめるような工夫が施されています。
また、ホワイエ(ロビー)では飲み物や軽食の提供もあり、このスタイルは日本で初めてサントリーホールが取り入れたそうです。
とても素敵な雰囲気で、一生に一度は行ってみたい魅力的なホールのひとつ。
興味があれば、バックステージツアー(舞台裏見学)ができるホールも多いので、参加してみるのもよいですね。
このように、それぞれのホールの特徴に注目してみると、さらにコンサートの魅力を感じることができますよ。
クラシックコンサートのよくある質問
さて、ここでよくある質問にお答えしましょう。
クラシックコンサートのマナーとは?
クラシックコンサートでは、以下の点に気をつけて楽しみましょう。
基本的なマナーさえ守れば、そんなに構えなくても大丈夫です。
- 音に注意しましょう
マナーの中で最も気をつけたいのは「音」です。
音はとても繊細なもの、と心得ましょう。
コンサートホールは、オーケストラの楽器の音や、歌声などが最大限に美しく響くように設計されています。
そして、ホールには「音」を楽しむために、大勢の人が集まっているのです。
皆が気持ちよく音楽に集中できるように、お互いにちょっとずつ、想像力と思いやりの心を持ち寄りましょう。<気をつけたいポイント>
- 時計のアラームは切っておく
- スマホの電源を切っておく(バイブ機能も意外と気になる)
- 大きな話し声や、演奏中のおしゃべりはひかえる
- ビニール袋は扱わない(カシャカシャと音が出る)
- 演奏中にパンフレットを見ない(めくる音が出る)
- 動いても音の出ない服や靴を身につける
- 香りに注意しましょう
整髪料や香水はひかえめにしましょう。
香りには好みがありますし、あまり強いにおいだと近くの人が不快に感じて、音楽に集中できなくなってしまいます。
「香害」にならないよう、気をつけたいものです。 - 時間に余裕を持ちましょう
コンサートの開演30分~1時間前にはホールに入れるようになります。
自由席の場合は、開場時間を確認して早めに行き、席を確保するとよいでしょう。
指定席の場合は、遅くとも開演15分前には着いていたいところ。
開演後、演奏中は他のお客さんの迷惑になるため、席につくことができない場合がほとんどです。
万が一遅れてしまった場合は、ロビーで鑑賞できたり、曲と曲の間に入れることが多いので、あきらめずに係員の指示に従いましょう。
また、トイレは開演前に済ませておくと安心です。
ちなみに、休憩中の女性トイレは長い列ができるので、早めに動くことをおすすめします。
開演前にはロビーでゆっくり過ごしたり、パンフレットを読んだりしてコンサートの雰囲気を楽しみましょう。
- 譲り合いましょう
特に客席の通路では、お互い譲り合いましょう。
各客席の前後はせまいので、奥の席の人が通るときには通路をあけます。
カバンなどを通路に置きっぱなしにしないように気をつけて。
また、終演後は出入り口に人が集中しがちなので、時間をずらすなど譲り合って移動しましょう。 - 寝てしまうのはアリ?
演奏中にリラックスして寝てしまっても、基本的にはOKです。
ただし、いびきをかいてまわりの人の迷惑にならないよう気をつけて!
また、ステージ上からは意外と客席がよく見えています。
演奏者や他のお客さんが、気持ちよく音楽に集中できるようにふるまうことがポイントですね。
せっかく聴きに来たのに寝てしまうなんてもったいない、と思うかもしれません。
そんなときは、寝てしまうほど心地よい音楽を楽しめたのだ、と前向きにとらえましょう。
その他、ホール内での飲食や写真撮影はNGなので、気をつけましょう。
面倒に思うかもしれませんが、マナーはお互いに気持ちよく音楽を楽しむために必要不可欠なものです。
マナーという名の思いやりをちょっとずつ持ち寄って、皆でコンサートの感動を分かち合いましょう。
クラシックコンサートをもっと楽しむには?
- 非日常を楽しむ
始まる前のワクワク感や、終わった後の余韻を楽しみましょう。
コンサートの前にはワクワクした気持ちを味わう時間、コンサートの後は感動をかみしめる時間をとってみるのです。
たとえば、コンサートの前後に食事やお茶をするなど。
コンサートによっては、開演前や休憩時間に飲み物のサービスや、ロビーコンサートが行われることもあります。
おしゃれをして出かけたり、素敵なホールで生演奏を聴いたりすることは、日常生活ではなかなか味わえないことですね。
コンサートで非日常の世界や雰囲気を思い切り楽しんでみましょう。
- 予習する
演奏される曲や演奏者に興味を持って、事前に調べておくこともおすすめです。
会場で渡されるパンフレットにも解説が書かれているので、開演前に目を通しておくとよいでしょう。<予習のポイント>
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- 曲について知る:どんな曲が演奏されるのかをチェック。
その曲が作られた時代背景やストーリーなどを知ると、曲のイメージがふくらみ、より楽しめます。
たとえばベートーヴェンの交響曲第6番には、「田園」という題がついていて、その中には「雷雨」の場面があります。
事前に知っていれば、音楽表現をさらに楽しむことができますね。
また、オペラなどは物語の内容や登場人物を知っておくとよいでしょう。 - 作曲家について知る:どんな人が作ったのかをチェック。
作曲家の活躍した時代、性格、その生涯、作曲の意図やエピソードなどに注目すると、コンサートをより楽しめるでしょう。
作曲家にはユニークなエピソードも多く、それを知るだけでも楽しいですよ。 - 演奏家について知る:演奏者や演奏団体、指揮者などのプロフィールをチェック。
ネット(ウェブサイトや動画サイト、SNSなど)で発信している人も多いので、見てみるとよいでしょう。
友人知人が出演する、なんてこともあるかもしれませんね。
どんな人が演奏するのかを知ると、コンサートに親しみが持てますし、期待や楽しみもさらにふくらみます。 - 実際に聴いてみる:CDやネットで、ながら聴きでもよいので実際に曲を聴いてみるとよいでしょう。
繰り返し聴くことで曲に愛着がわき、生演奏をより楽しむことができます。
また、CDなどでは聴こえなかった楽器の音がホールでは聴こえるなど、新しい発見もあるかもしれません。
同じ曲でも指揮者や演奏者によって全く違う音楽になるため、聴き比べてみるのも楽しいですね。
- 曲について知る:どんな曲が演奏されるのかをチェック。
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- お気に入りの席を見つける
クラシックコンサートで最もよい席はどこだと思いますか?
ライブやスポーツ観戦では最前列が特等席ですが、クラシックコンサートではちょっと違います。
最前列は、ステージに最も近いのでよいのでは?と思われがちですが、実際はステージ全体が見えませんし、音の響きもかたよっています。
もっとも、たまに指揮者や出演者の熱烈なファンが最前列に陣取っていることもありますが。
クラシックコンサートでおすすめの席は、「真ん中の真ん中」。
ステージ全体が見渡せる場所で、真正面の真ん中に近い席です。
または、2階席の正面前寄り(天皇陛下がご覧になるときに用意される席)あたりがよいでしょう。
これらの場所は、音の響きが最もよいとされています。
一方、初心者が避けたい席は、一番後ろ。
中央より後ろになると、音が届きにくいそうです。
ちなみに、後ろの席の場合はオペラグラスや双眼鏡を持っていくと、演奏者がよく見えて便利。
また、左派と右派も存在するようです。
特にピアノリサイタルで多く見られます。
ピアノの鍵盤やピアニストの弾いている手を見たい場合は左に、ピアニストの表情を見たい場合は右に座る方が多いようです。
左右では見え方はもちろんのこと、音の響き方も微妙に違うので、試してみるとおもしろいかもしれませんね。
その他、演奏者の見え方や音の響き方の好みによっては、前寄り派や後ろ寄り派、バルコニー(2階や3階の、左右にせり出している席)派なども。
実際に座ってみて、自分のお気に入りの席を探してみるのも楽しそうですね。
- アンコール曲を楽しむ
プログラムの演奏がすべて終わった後の鳴りやまぬ拍手・・・・・・。
その拍手に応えるように、ステージ上ではカーテンコール(出演者が出てきて挨拶をすること)が数回繰り返されます。
ちなみにミュージカルでは、劇団四季の「ライオンキング」の公演で、なんと17回も行われたことがあったそうです。
やがて、拍手はアンコールへと変わっていきます。
アンコールとは、もう一度演奏してほしい、もう一曲聴きたいというリクエストです。
その気持ちに応えて演奏されるのが、アンコール曲。
その日のプログラムの中から一曲というパターンと、プログラムにのっていない曲を演奏するパターンがあります。
通常、何の曲を演奏するのかは内緒です。
アンコール曲を演奏する直前に指揮者や演奏者が教えてくれる場合もありますし、終演後に曲名が掲示される場合もあります。
アンコールが終わっても会場が大盛り上がりで拍手が続き、演奏者の体力が残っていれば、2曲演奏してくれることも。
有名なアンコール曲には、「ドナウ川のさざなみ」と「ラデツキー行進曲」があります。
この2曲は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートで毎年必ず演奏されている曲です(恒例なので曲名はバレていますが)。
特に「ラデツキー行進曲」は、会場のお客さんもノリノリで手拍子をし、指揮者も聴衆に向かって楽しそうに指揮をします。
アンコールの魅力は、親しみのある曲や知られざる名曲を聴けること、演奏者の緊張が解けてさらに生き生きとした演奏が聴けることでしょう。
演奏する人も聴いている人もリラックスして、楽しい気分になれること間違いなし!
個人的には、アンコールはコンサートの中でもお気に入りの時間です。
おまけをもらったようでうれしいですし(お得?)、出演者もお客さんもとても楽しそう。
ぜひアンコールにも注目して、最後まで楽しんでくださいね。
- 心と体で感じてみる
クラシックコンサートはかたくるしいものと決めつけていませんか?
これまでみてきたように、実際にコンサートではちょっとした知識やマナー、決まりごとも必要です。
しかし、コンサートには楽しみや感動も存在します。
知識やマナーなどはその楽しみや感動をさらに深め、皆と分かち合うためにあるのです。
そして、感動は心や体で音楽を感じることから始まるのではないでしょうか。
NHK交響楽団の第一コンサートマスターを務める篠崎史紀さん(通称・マロさん)は、こんなふうに言っています。クラシックは感じるもの。コンサートでは、生演奏を聴くということが大事です。生の音は共鳴振動といって、血液にまで影響を与えます。自然界にある波の音や川のせせらぎの音などと同じ。楽器は共鳴振動で音が鳴っています。寝てしまうくらいリラックスできるし、リフレッシュもできるのです。音楽に身を任せることがコンサートを楽しむコツですね。
ぜひ、実際にコンサートに足を運んで音楽に身を任せ、心と体で感動を体験してみてくださいね。
まとめ
クラシックコンサートの魅力やマナー、楽しみ方などについてお伝えしてきました。
コンサートへのハードルがちょっと下がったでしょうか?
必要最低限のマナーや思いやり、ちょっとした知識があると、コンサートを100倍楽しむことができますよ。
ぜひ気軽に生のクラシック音楽を心と体で感じて、感動を味わってみましょう。
クラシックコンサートとの出会いによって、あなたの人生がより楽しく豊かなものとなりますように!